年末調整で火災保険料は控除できる?地震保険料控除の申請方法と記入例

この記事では、なぜ火災保険が対象外なのか、地震保険ならいくら戻るのか、年末調整と確定申告の記入欄まで、実務で案内している内容をそのまま書きます。
私はFPとして12年、住宅購入相談の現場で火災保険と地震保険の見積もりを何百件も見てきました。控除証明書の見方や出し忘れたときのリカバリーも、つまずきやすいポイントを押さえて解説します。
年末調整で火災保険料は控除できる?まず結論から

いちばん大事なところから。火災保険料そのものは、現行制度では年末調整・確定申告のどちらでも控除の対象になりません。控除できるのは地震保険の保険料です。
火災保険のみの加入では控除を受けられない
火災保険にしか入っていない人は、残念ながら保険料控除は1円も受けられません。国税庁の地震保険料控除の説明にも、控除の対象は地震等を原因とする損害を補償する地震保険料だと明記されています。
相談現場でいちばん多い勘違いがこれです。「火災保険の証明書が届いた」と持ってこられた書類が、実は地震保険料控除証明書だった、というケースもよくあります。
地震保険に加入していれば控除を受けられる
火災保険に地震保険をセットで付けている場合、その地震保険部分の保険料が控除対象になります。日本の地震保険は単独で入れず、火災保険とセットで契約するしくみです。
つまり「火災保険の控除」ではなく「地震保険の控除」。同じ保険証券にまとまっていても、控除されるのは地震保険分だけだと覚えておいてください。
なぜ火災保険が控除対象外なのか(2006年の税制改正の経緯)
昔は「損害保険料控除」という制度があり、火災保険料も一定額まで控除できました。これが2006年の税制改正で廃止されたのです。
廃止と入れ替わる形で2007年分から始まったのが、いまの地震保険料控除です。地震災害への備えを税制面から後押しする狙いで、火災保険全般ではなく地震保険に絞られました。
この経緯を知らないと「昔は戻ったのに」と混乱します。制度がまるごと作り替えられた、と理解するとすっきりします。
地震保険料控除のしくみと対象になる保険料
控除の中身を具体的に見ていきます。所得税の上限は年5万円、住民税は年2万5,000円。この数字は国税庁の地震保険料控除のページで確認できます。

地震保険料控除とは(基本の意味)
地震保険料控除とは、1年間に払った地震保険料の一定額を、所得から差し引ける制度です。所得が減れば、その分かかる税金も減ります。
控除は「払った税金が満額戻る」わけではありません。差し引いた金額に税率をかけた分だけ、税負担が軽くなる、というのが正しい理解です。
控除の対象になる保険料・ならない特約
地震保険そのものは対象です。一方で、火災保険に付ける特約のなかには対象になるものとならないものがあり、ここが見落とされがちです。
| 項目 | 控除の扱い |
|---|---|
| 地震保険の保険料 | 対象 |
| 地震危険等上乗せ補償特約 | 対象になり得る |
| 地震火災費用特約 | 対象外 |
| 火災保険の保険料本体 | 対象外 |
名前が似ていて紛らわしいですが、「地震火災費用特約」は地震保険ではなく火災保険側の特約のため、控除対象外です。判断に迷ったら、控除証明書に金額が記載されているかどうかで確認するのが確実です。
賃貸住宅や家財保険でも控除を受けられるか
賃貸でも控除は受けられます。持ち家かどうかは関係なく、地震保険(家財だけを対象にしたものを含む)に加入していれば対象です。
ただし注意点が一つ。賃貸契約で入る「家財保険」や「借家人賠償責任保険」は、それ自体は火災保険系であり控除対象外です。そこに地震保険が付帯していれば、その地震保険分だけが控除されます。
私の経験上、賃貸の入居者向けパッケージ保険は地震補償が付いていないことも多いです。控除証明書が届かない場合は、そもそも地震保険に入っていない可能性が高いと考えてください。
旧長期損害保険料控除との違いと併用時の計算
廃止された損害保険料控除には、経過措置が残っています。2006年12月31日までに契約した一定の長期損害保険契約は、いまでも「旧長期損害保険料」として控除できる場合があります。
条件は、2006年12月31日までの契約であること、満期返戻金があること、保険期間が10年以上であること、2007年1月1日以後に契約変更がないこと、です。
地震保険料控除と旧長期損害保険料控除の両方がある場合は合算しますが、合算後の所得税の控除上限は5万円のまま。両方足しても5万円を超えては控除できません。
控除でいくら税金が戻る?金額の計算と試算
気になるのは「で、いくら戻るの?」ですよね。結論から言うと、地震保険料控除は所得税と住民税で上限も計算式も違います。

所得税の地震保険料控除の金額
所得税では、払った地震保険料が5万円以下ならその全額、5万円を超えると一律5万円が控除額です。
| 年間の地震保険料 | 控除額 |
|---|---|
| 5万円以下 | 支払った保険料の全額 |
| 5万円超 | 5万円(上限) |
住民税の地震保険料控除の金額(上限の違い)
見落としやすいのが住民税です。住民税の地震保険料控除の上限は2万5,000円で、所得税の半分。同じ保険料でも控除される枠が違います。
「所得税で5万円ぶん控除されたから住民税も5万円」ではありません。ここを取り違えると試算がずれます。
実際にいくら戻るかのシミュレーション
控除額そのものと、実際に減る税金は別物です。所得税は控除額に税率をかけた分だけ軽くなります。
例えば年間の地震保険料が4万円、所得税率10%の人なら、所得税は4万円×10%で4,000円の軽減。住民税は控除額2万円(上限内)に対し税率10%で2,000円の軽減です。
つまり合計で約6,000円。正直に言うと、金額としては大きくありません。それでも申告するだけで毎年戻るのですから、出さない手はないというのが私の意見です。
※税率は人それぞれ異なります。自分の所得税率を当てはめて計算してください。
年払い・一括払い(長期契約)での控除の扱い
地震保険を5年などの長期で一括払いした場合、払った保険料を保険期間で割った「1年分」が、その年ごとの控除対象になります。
一括で10万円払ったから今年10万円控除、とはなりません。保険会社が発行する控除証明書に「当年分の控除対象保険料」が記載されているので、その金額を使えば間違いません。
地震保険料控除の申請方法(年末調整・確定申告)

ここからは実際の手続きです。会社員は年末調整、自営業の人や控除し忘れた人は確定申告。どちらも地震保険料控除証明書が起点になります。
地震保険料控除証明書を用意する
控除証明書は保険会社が発行します。地震保険の契約初年度は保険証券に同封され、2年目以降は毎年だいたい10月頃に郵送されてくることが多いです。
ハガキや圧着はがきの形で届くことが多く、「これ広告かな」と捨ててしまう人がいます。秋に保険会社から届いた郵便物は、開けるまで処分しないでください。
年末調整での記入手順と記入例
会社員は「給与所得者の保険料控除申告書」に記入します。地震保険料控除の欄に、控除証明書に書かれた金額を転記し、証明書を添えて勤務先に提出するだけです。
記入のポイントは、申告書の地震保険料控除欄で「地震保険料」か「旧長期損害保険料」かの区分を間違えないこと。証明書に区分が印字されているので、それに合わせて選びます。
提出先は勤務先、提出期限は会社が定める締切です。多くの会社で11月頃に回収するので、証明書が届いたら早めに渡しておくと安心です。
確定申告での記入手順と記入例
自営業の人や、年末調整で出し忘れた人は確定申告で控除します。確定申告書の「地震保険料控除」欄に控除対象額を記入し、控除証明書を添付(またはe-Taxで内容入力)します。
確定申告の期間は原則として翌年2月16日から3月15日まで。ただし控除を受けるだけの還付申告なら、後述のとおりもっと早くから提出できます。
控除証明書を紛失したときの再発行方法
なくしても慌てなくて大丈夫です。控除証明書は契約先の保険会社に連絡すれば再発行してもらえます。
再発行は郵送になることが多く、届くまで数日〜1週間ほどかかります。年末調整の締切ギリギリに気づくと間に合わないので、紛失に気づいた時点ですぐ連絡してください。
電話のほか、保険会社によってはマイページから再発行依頼や証明書のダウンロードができる場合もあります。契約している会社の手続き方法を確認しておくと早いです。
控除し忘れたときのリカバリー方法
年末調整で出し忘れても、ほぼ取り返せます。確定申告(還付申告)でやり直せるからです。ここを知らずに毎年あきらめている人を見ると、もったいないと思います。

年末調整で出し忘れても確定申告でやり直せる
勤務先への提出が間に合わなかった、証明書が後から出てきた。そんなときは自分で確定申告すれば控除を反映できます。
必要なのは控除証明書と源泉徴収票。会社員でも、この2つがあれば還付申告は自分でできます。
還付申告は5年さかのぼれる
還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間できます。去年だけでなく、数年前の出し忘れもまとめて取り戻せる可能性があります。
「もう何年も控除してなかった」という人は、過去分の控除証明書を保険会社から再発行してもらい、年ごとに還付申告すれば戻る場合があります。私が実際に案内して数千円〜が戻ったケースもあります。
ケース別の注意点(共済・夫婦・個人事業主)
最後に、判断を間違えやすい3つのケース。共済、夫婦で契約者が違う場合、個人事業主の経費計上です。

火災共済・地震共済の控除の可否
共済でも、地震保険に相当する保障部分なら地震保険料控除の対象になり得ます。ポイントは「控除証明書が発行されるかどうか」です。
共済から地震保険料控除証明書が届けば、その金額を申告できます。火災共済だけで地震保障がなければ、控除の対象はありません。証明書の有無で判断するのが確実です。
夫婦や家族で契約者が異なる場合の考え方
控除を受けられるのは、原則としてその保険料を実際に払っている人です。契約者が夫でも、生計を同じくする家族が支払っていれば、その払った人で控除する考え方になります。
注意したいのは、同じ地震保険料を夫婦で二重に控除することはできない点。1つの契約の控除は、どちらか一方でしか使えません。共働きなら、税率の高いほうで控除したほうが戻りは大きくなります。
個人事業主が事業用物件の保険料を経費にする場合との違い
ここは線引きが大事です。個人事業主が店舗や事務所など事業用物件にかけた地震保険料は、地震保険料控除ではなく「経費」として扱います。
自宅兼事務所のように、自宅部分と事業部分が混ざる場合は按分します。自宅部分の地震保険料は地震保険料控除、事業部分は経費、と分けて処理するのが基本です。両方を二重に使うことはできません。
火災保険加入者が控除を受けるには

火災保険にしか入っていない人が控除を受けたいなら、答えはシンプルです。地震保険を付ければよい。ただし「付ければ何でも控除」ではない点に注意してください。
地震保険とセットで加入することで控除対象になる
地震保険は火災保険とセットで契約します。火災保険の途中からでも地震保険を追加でき、追加すればその地震保険料が控除対象になります。
控除のためだけに地震保険に入るのは本末転倒ですが、地震への備え自体は必要なもの。結果として控除も付いてくる、と考えるのが健全だと私は思います。
要件を満たす火災保険は対象になる
もう一つの道が、前述の旧長期損害保険です。2006年末までに契約した満期返戻金あり・保険期間10年以上の長期火災保険なら、いまも控除対象になり得ます。
自分の契約が該当するか分からないときは、保険会社に「控除証明書が出る契約か」を問い合わせるのが早道です。証明書が発行されるなら、それが控除できる証拠です。
火災保険・地震保険の年末調整についてよくある質問
よくある質問
今日できる一歩はシンプルです。秋に保険会社から届いた郵便物を探し、地震保険料控除証明書があるか確認してください。なければ、自分が地震保険に入っているかを契約先に問い合わせるところから始めましょう。

- 国税庁 No.1141 地震保険料控除
- 国税庁 No.1140 生命保険料控除(旧制度の整理)
- ソニー損保 旧長期損害保険料控除の解説
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- 国税庁 No.2020 確定申告
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